こんにちは!AWSを学び始めた皆さん、「VPC」という言葉を聞いて「なんだか難しそう…」と思っていませんか?
実は私も最初はそうでした。ネットワークの専門用語がたくさん出てきて、どこから手をつけていいか分からない状態でした。
でも安心してください!VPCは一度理解してしまえば、AWSの他のサービスを使う上でとても重要な基盤になります。
今回は「図解即戦力 Amazon Web Servicesのしくみと技術が これ1冊でしっかりわかる教科書[改訂2版]」を参考に、VPCの基本からセキュリティ設定まで、初心者の方でも分かりやすく解説していきます!
AWSでネットワークを構築する前に知っておきたいこと
クラウドとオンプレミスのネットワークの違い
従来のオンプレミス環境では、物理的なサーバーやネットワーク機器を自社で管理していました。
一方、AWSなどのクラウド環境では、これらのインフラがすべて仮想化されています。
従来のオンプレミス:
- 物理的なルーターやスイッチでネットワークを構築
- ケーブルの配線や機器の設置が必要
- 障害時は現地での対応が必要
AWSクラウド:
- ソフトウェアで定義されたネットワーク
- Web上の管理画面で設定変更が可能
- 冗長化や可用性が標準で提供
この違いを理解することで、なぜVPCが必要なのかが見えてきます。
なぜAWSでVPCが必要なのか
AWSでは、複数のお客様が同じ物理インフラを共有しています。
そのため、自分専用の仮想的なネットワーク空間を作る必要があります。それがVPC(Virtual Private Cloud)です。
VPCを作ることで:
- セキュリティの確保: 他のお客様から完全に分離された環境
- ネットワーク設計の自由度: 自分好みのIPアドレス範囲やサブネット設計
- アクセス制御: 細かいレベルでの通信制御が可能
VPCは、いわば「AWS上に作る自分だけのデータセンター」のようなものです!
AWS VPCの基本概念を理解しよう
VPC(Virtual Private Cloud)とは
VPCは、AWS上に作成する仮想的なプライベートネットワークです。
VPCの主な特徴:
- 完全に分離された環境: 他のAWSアカウントからアクセス不可
- カスタマイズ可能: IPアドレス範囲を自由に設定
- 複数のアベイラビリティーゾーンにまたがる: 高可用性を実現
VPCを作成すると、その中にEC2インスタンスやデータベースなどの各種AWSサービスを配置できます。
リージョンとアベイラビリティーゾーン
AWSのインフラ構成を理解するために、重要な概念を押さえておきましょう。
リージョン:
- 世界各地にあるAWSのデータセンターの集合体
- 日本には東京リージョンと大阪リージョンがある
- VPCは特定のリージョン内に作成される
アベイラビリティーゾーン(AZ):
- リージョン内の物理的に分離されたデータセンター
- 東京リージョンには複数のAZが存在
- 異なるAZに分散配置することで障害耐性を向上
VPCは1つのリージョン内に作成されますが、複数のAZにまたがってサブネットを配置できます。
サブネットの役割と設計
サブネットは、VPC内をさらに細かく分割したネットワーク領域です。
サブネットの種類:
- パブリックサブネット: インターネットからアクセス可能
- プライベートサブネット: インターネットからの直接アクセス不可
設計のポイント:
- Webサーバーはパブリックサブネットに配置
- データベースはプライベートサブネットに配置
- 各AZに同じ種類のサブネットを配置して冗長化
この設計により、セキュリティを保ちながら可用性の高いシステムを構築できます。
VPCでネットワークを構築する手順
VPCの作成から設定まで
実際にVPCを作成する基本的な流れを見てみましょう。
1. VPCの作成
- IPアドレス範囲(CIDR)を決定
- 例:10.0.0.0/16(65,536個のIPアドレス)
2. サブネットの作成
- パブリックサブネット:10.0.1.0/24
- プライベートサブネット:10.0.2.0/24
3. インターネットゲートウェイの作成と接続
- VPCをインターネットに接続するためのゲートウェイ
この手順で、基本的なVPCの骨格が完成します。
インターネットゲートウェイとNATゲートウェイ
ネットワークの出入り口となるゲートウェイには、用途に応じて2種類あります。
インターネットゲートウェイ:
- パブリックサブネットのリソースがインターネットとやり取り
- Webサーバーなど、外部からアクセスされるサービス用
NATゲートウェイ:
- プライベートサブネットからインターネットへの送信専用
- データベースサーバーのソフトウェア更新など
NATゲートウェイにより、プライベートサブネット内のリソースも安全にインターネットへアクセスできます。
ルートテーブルの設定方法
ルートテーブルは「どの宛先にどの経路で通信するか」を定義するものです。
パブリックサブネット用ルートテーブル:
- ローカル通信:VPC内(10.0.0.0/16)
- インターネット通信:インターネットゲートウェイ経由(0.0.0.0/0)
プライベートサブネット用ルートテーブル:
- ローカル通信:VPC内(10.0.0.0/16)
- インターネット通信:NATゲートウェイ経由(0.0.0.0/0)
この設定により、各サブネットの役割に応じた通信制御が実現されます。
セキュリティ設定で安全なネットワークを作ろう
セキュリティグループとネットワークACLの違い
AWSでは、2段階のセキュリティ機能でネットワークを保護します。
セキュリティグループ:
- インスタンスレベルのファイアウォール
- ステートフル(戻りの通信は自動で許可)
- 許可ルールのみ設定可能
ネットワークACL:
- サブネットレベルのファイアウォール
- ステートレス(戻りの通信も明示的に許可が必要)
- 許可・拒否ルール両方設定可能
この2つを組み合わせることで、多層防御によるセキュリティを実現できます。
セキュリティ設定のベストプラクティス
セキュリティを高めるための重要なポイントをご紹介します。
最小権限の原則:
- 必要最小限の通信のみ許可
- 不要なポートは閉じる
- 送信元IPアドレスを限定
具体的な設定例:
- Webサーバー:HTTP(80)、HTTPS(443)のみ許可
- データベース:アプリケーションサーバーからのみアクセス許可
- SSH:管理用IPアドレスからのみ許可
定期的にセキュリティグループの設定を見直すことも大切です。
VPCエンドポイントでセキュアな接続
VPCエンドポイントを使うと、インターネットを経由せずにAWSサービスに接続できます。
メリット:
- セキュリティの向上:インターネットを経由しない
- コストの削減:NATゲートウェイの使用量削減
- 性能の向上:AWS内部ネットワークでの高速通信
よく使われるエンドポイント:
- S3エンドポイント:ストレージサービスへの接続
- DynamoDBエンドポイント:NoSQLデータベースへの接続
これらの設定により、よりセキュアで効率的なアーキテクチャを構築できます。
実際の業務で使えるVPC設計パターン
Webアプリケーション用の基本構成
典型的な3層アーキテクチャをVPCで実現する方法を見てみましょう。
構成要素:
- フロントエンド層: パブリックサブネットのWebサーバー
- アプリケーション層: プライベートサブネットのアプリサーバー
- データベース層: プライベートサブネットのDBサーバー
セキュリティ設計:
- インターネット → Webサーバーのみアクセス可能
- Webサーバー → アプリサーバーへの通信
- アプリサーバー → DBサーバーへの通信
この設計により、セキュリティを保ちながら拡張性の高いWebアプリケーションを構築できます。
Elastic Load Balancingとの組み合わせ
負荷分散とVPCを組み合わせることで、高可用性を実現できます。
Application Load Balancer(ALB):
- 複数のAZのパブリックサブネットに配置
- 背後の複数のWebサーバーに負荷分散
- ヘルスチェック機能で異常インスタンスを自動除外
設計のポイント:
- 最低2つのAZにサブネットを配置
- 各AZにWebサーバーを配置
- ALBが自動的にトラフィックを分散
この構成により、一部のAZに障害が発生してもサービスを継続できます。
Auto Scalingとの連携方法
需要に応じてサーバー台数を自動調整する仕組みも、VPCとうまく連携できます。
Auto Scalingの設定:
- 複数のAZのサブネットを指定
- CPUやメモリの使用率に基づいて自動スケール
- ALBとの連携で新しいインスタンスにも自動で負荷分散
運用上のメリット:
- コストの最適化:必要な時だけリソースを増加
- 可用性の向上:障害時の自動復旧
- 管理の簡素化:手動でのサーバー管理が不要
これらの機能を組み合わせることで、本格的なクラウドネイティブなシステムを構築できます。
VPCを更に深く学ぶために
書籍で学べるVPCの詳細設計
今回の記事では、VPCの基本的な概念と使い方をご紹介しました。
「図解即戦力 Amazon Web Servicesのしくみと技術が これ1冊でしっかりわかる教科書[改訂2版]」では、さらに詳しい内容が図解で分かりやすく解説されています。
書籍で学べる詳細内容:
- より複雑なネットワーク設計パターン
- VPCピアリングや Transit Gateway
- ハイブリッドクラウド構成
- セキュリティのベストプラクティス詳細
- 実際の企業での導入事例
特に図解が豊富なので、ネットワークの概念を視覚的に理解できるのが大きなメリットです。
次に学ぶべきAWSサービス
VPCを理解したら、次はこれらのサービスを学ぶことをおすすめします:
セキュリティ関連:
- AWS IAM:アクセス制御とユーザー管理
- AWS WAF:Webアプリケーション向けファイアウォール
- Amazon GuardDuty:脅威検知サービス
監視・運用関連:
- Amazon CloudWatch:システム監視とログ管理
- AWS CloudTrail:API呼び出しの記録
- AWS Config:設定変更の追跡
コンピューティング・ストレージ:
- Amazon EC2:仮想サーバーサービス
- Amazon S3:オブジェクトストレージサービス
- Amazon RDS:マネージドデータベースサービス
これらのサービスも同じ書籍で体系的に学べるので、AWSスキルを効率的に身につけることができます。
まとめ
今回は、AWS VPCの基本概念から実践的な設計パターンまでを解説しました。
重要なポイントをおさらいすると:
- VPCはAWS上の自分専用ネットワーク空間
- パブリック・プライベートサブネットで適切な配置
- セキュリティグループとネットワークACLで多層防御
- ALBとAuto Scalingで高可用性と拡張性を実現
VPCはAWSを使う上での重要な基盤技術です。
一度しっかりと理解すれば、他のAWSサービスとの組み合わせも理解しやすくなります。
まずは簡単な構成から始めて、徐々に複雑な設計にチャレンジしてみてください。
継続的な学習で、AWSのネットワーク設計スキルを身につけていきましょう!
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